優しさは、静かに返ってくる

行きつけのカフェで、
いつも見かける先輩がいたので、
隣に座りご挨拶をした。

父親くらい歳の離れた方なのに、
いつも柔らかく笑っていて、どこか
若々しいノリのある人だ。

ふと見ると、先輩はLINEの返信中。
その瞬間、僕の悪い癖というか……

『場を少しでも明るくしたい』という
サービス精神が働いてしまった。

以前、女性とのやり取りを楽しそう
に話していたこともあり、軽い冗談の
つもりで、

『スケベな返信してるんですか?』

とボケを放った、その瞬間。

空気がピタリと止まった。

先輩は怒鳴ったわけではない。
ただ静かに、しかし明確なトーンで、

『普通の返信ですよ。いくら何でも
言っていいことと悪いことがありま
すよ』

と返してきた。

……あ、やってしまったな。

その感覚が一気に胸に広がる。
もちろん悪意なんてひとつもない。
ただの冗談。ただのアクセント。

でも、相手が不快に感じたなら、
それはもう僕の落ち度だ。

すぐに頭を下げて、

『本当にすみません。僕が軽率でした』

と誠意を込めて謝った。

ママが『まあまあ』と空気を和らげて
くれたけれど、しばらくテーブルには
薄い重さが漂っていた。

先輩は他のお客さんと話し始めた。
けれど、そこに僕がいつものノリで
混ざるのは違うと思った。

だから心の中でひとつ決めた。
“もし五分経っても空気が戻らなかっ
たら、 改めてきちんと謝ろう”。

エンタメやサービス精神で放った
言葉だったとしても、相手が傷ついたの
なら、素直に頭を下げるしかない。

それが、僕の中で大事にしている
スタンスだから。

そして数分後。
予想していなかったことが起きた。

先輩の方から笑顔でこちらを振り
向いて、そっと手を差し出しながら、

いつもの笑顔で『大丈夫』

と、握手を求めてきてくれたのだ。  

その瞬間、胸がじんわりと熱くなった。
ああ、この人は本当に器の大きい人な
んだな、と。

改めてもう一度、

『本当にすみませんでした』

と伝えると、先輩は、

『いやぁ、虫の居所が
悪かったかもしれないから』

と、今度はこちらをフォローしてくれた。

そこからは、いつものカフェの空気
に戻った。いつもの会話と、いつもの
笑い声。

先輩は自然に話を振ってくれて、僕が
まだ少し気にしているのを感じ取った
のか、肩を軽くポンと叩いてくれたり
もした。

店を出る時にもう一度頭を下げると、
その頃には先輩も、店の空気も、すっ
かり“いつも通り”になっていた。

外に出て、冷たい空気を吸い込み
ながら、ふと考えた。

“何かを与えたい”という気持ちに
嘘さえなければ、人はちゃんとフェア
に返してくれるんだな、と。

言葉のやり取りだけじゃなく、
あの握手の温度ごと、心に刻んで
おきたい出来事だった

でも、皆さん。

『地雷は……踏まないに
越したことはありません。』

攻めすぎには、
どうか気をつけてくださいね(笑)

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