「開発」という言葉がずっと苦手でした。
なんというか、自分とは関係のない世界の言葉だと思っていた。
工場とか、宅地とか、新しいアプリとか、そういうものを「開発する」と言うのは知っている。
でも、人の身体に対してその言葉が使われていると知ったとき、正直、少し身構えました。
身構えた、というより、ぞわっとした、が近いかもしれません。
何かを仕込まれるみたいだ、と思ったんです。
まっさらな土地を、誰かが勝手に造成していくような。
自分の意思とは関係のないところで、何かを「させられる」ような響き。
だからこの言葉を見るたびに、私はそっとページを閉じていました。
我ながら大袈裟だな、とは思います。でも、最初の印象って、なかなか上書きされない。
わたしは開発する側の人ではありません
先にはっきりさせておきたいことがあります。
私は開発する系の女風のセラピストではありません。
誰かに開発を施す側の人間ではないし、これから施すつもりもない。
それどころか、自分が受け手として何かを「受けた」経験があるわけでもない。
つまり、当事者ではないんです。
じゃあなぜ書くのか。自分でも、うまく説明できる自信はありません。
ただ、この「開発」という言葉に身構えていた数ヶ月のあいだに、私の中で何かが少しずつ動いた。
最初の「ぞわっ」が、調べたり、人の書いたものを読んだりするうちに、別の温度に変わっていった。
その変化が、思っていたよりずっと静かで、悪くないものだった。
それを、同じように身構えている誰かに、渡したくなった。
たぶん、それだけです。
だからこのコラムは、専門家の解説ではありません。
やり方を教える記事でもない。
「こういう世界があるらしい」と外から知った人間が、自分の心の動きを書き留めていくだけの、ひとりごとに近い読み物です。
「気になるけど、私には縁がない」の場所から
半分は興味、半分は抵抗。
気になるのに、「でも私には縁がない気がする」という、あの中途半端な距離感。
たぶん、これを読んでいるあなたも、似たところにいるんじゃないでしょうか。
検索窓に何かを打ち込みかけて消した。
誰にも言えない問いを抱えたまま、スマホを伏せて眠った。
あなたにも、あったかもしれない。
「開発」という言葉に引っかかってここまで来た時点で、たぶん私たちは少しだけ似ています。
その引っかかりをおかしいとは思いません。むしろ、引っかかれる人のほうが、自分の感覚にちゃんと正直なんじゃないか、と最近は思うようになりました。
すぐに飛びつかない。違和感を違和感のまま、しばらく手元に置いておける。
それは、慎重さであって、臆病さではない気がします。
そもそも、その「開発」という言葉が何を指しているのか。
それすら、私は最初ちゃんとわかっていませんでした。仕込む、という私の勝手なイメージと、実際の意味は、けっこう違っていたんです。
そのあたりは別のところで一度ゆっくり整理したので、もし言葉そのものが気になるなら、そもそも「開発」って何なのかを、当事者じゃない私なりに整理した話を先に読んでもらってもいいかもしれません。
順番は、どこからでもかまいません。
このコラムでやろうとしていること
ひとつだけ、決めていることがあります。
私が「わかったふり」をして、全部を説明しきろうとしないこと。
正直に言えば、私に語れる範囲はとても狭い。
受けたこともないし、する技術もない。
だから、当事者にしか言えないことは、当事者の言葉に委ねるつもりです。
実際にその現場にいる人や、身体のことをちゃんと調べた人の文章へ、そっとリンクを架ける。
私の役目は、たぶんそこで橋を渡すことであって、橋の向こうまで連れていくことではない。
全20回、章を分けて書いていきます。
最初は、いちばん身近で、いちばん「怖そう」と思われがちな胸や乳首のあたりから。
そのあと、誰もちゃんと教えてくれなかった身体の内側の話へ。
途中、申し込めない羞恥とか、自分の身体が好きになれないとか、そういう簡単に「大丈夫」とは言えない感情の谷を通ります。
最後のほうで、もし誰かが踏み出すならどうするか、という現実的な話をして、それから「べつに、しなくてもいい」という場所に着地する予定です。
しなくていい、というのを、最後に置きたかった。
知るだけで終わってもいい。読んで、ふうん、と思って、いつもの生活に戻ってもいい。
そういう自由が前提にある話として、書きたいんです。何かをさせるための文章には、したくない。
地図みたいなものは、最後にちゃんと用意しておきます。
全部を一気に読む必要はないし、どこから入ってもいいように作るつもりです。
気が向いたとき、引っかかった言葉のところだけ開いてくれたら、それでいい。
最初の一歩としては、ずいぶん遠回りな自己紹介になりました。
でも、急がない話をしようとしているのだから、入口くらいは、ゆっくりでいいと思っています。
ここまで読んでくれて、ありがとうございました。
これはあくまで「こんな開発もあるらしい」という紹介の話です。
やるか、やらないか、知るだけにしておくか。それを決めるのは、いつでもあなたです。
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