神無月ピエロが今シーズンみているアニメの中に
「スーパーの裏でヤニ吸うふたり」
というものがあります。

一言で言えば、
「煙草を口実に、少しずつ心の距離が縮まっていく、大人同士の静かなヒューマンドラマ。」
恋愛そのものを描く作品ではなく、「煙草を吸う数分間」という何気ない時間の中で、お互いの本音や弱さ、人柄が少しずつ見えてくる物語です。
派手な展開はありません。
ただ、隣で煙草を吸い、他愛ない会話を重ねる。
その積み重ねが、二人の関係を少しずつ変えていきます。
このシーンが、なんだかセラピストとお客様の関係を想像させられたので、神無月が少し文章を綴ってみました。
『ラブホの中でヤニ吸うふたり』著:神無月ピエロ
灰皿に、一本目の吸い殻が転がる。
ホテル特有の甘い香りと、火をつけたばかりの煙草の匂いが静かに混ざり合う。
お客様「…一緒に吸えるの、ありがたいです」
火を点けてもらった煙草を唇に運びながら、お客様が小さく笑った。
その一言に、少しだけ驚く。
神無月「そうなんですか?」
お客様「うん。普段は吸う場所も少ないし、一人で吸うことばかりだから」
細く吐かれた煙が、暖色の照明に溶けていく。
煙草の煙は不思議だ。
吐いた瞬間は一本の線なのに、少し経つと形を失い、相手の煙と自然に混ざってしまう。
まだ、ふたりの距離は少し遠い。
同じベッドの端に腰掛けていても、肩ひとつ分の空間がある。
それが、この時間にはちょうどいい。
施術が始まる。
言葉は減る。
代わりに聞こえてくるのは、呼吸。
緊張がほどけていく呼吸。
安心して眠りに近づいていく呼吸。
時計だけが、静かに時間を刻んでいる。
休憩。
お客様「一本だけ」
そう言って、またベッドに腰掛ける。
今度は、さっきより少し近い。
意識して近づいたわけじゃない。
戻ってきたら、自然とそこに座っていた。
ガラスの灰皿には、吸い殻が二本増えている。
カチ、とライターの音。
煙を肺いっぱいまで吸い込む。
熱が胸の奥へ落ちていく。
ゆっくりと吐き出した煙は真上ではなく、少し横へ流れ、お客様の煙と重なった。
白い煙に境界はない。混ざり合った煙は、どちらのものだったのか、もう分からない。
お客様「こういう時間が、一番好きかもしれません」
煙を目で追いながら、呟く。
お客様「何もしない時間」
神無月「…何もしないって、意外と難しいですからね」
お客様「うん」
短い返事。
でも、その「うん」が、この部屋ではよく響いた。
施術が終わる。
ガウンを羽織り直し、最後の一本に火をつける。
もう、最初の距離ではない。
肩が触れるか、触れないか。
互いに寄ろうとしたわけでもない。
それでも、気づけばその距離になっていた。
神無月は少し顎を上げて煙を吐く。
女性はその横顔を見ようとはしない。
見るのは、その少し先。
煙の向こう側。
目は合わない。
それでも、不思議と隣にいることだけは分かる。
お客様「また、一緒に吸えたらいいですね」
煙草を灰皿へ置きながら言う。
神無月「そうですね」
約束はしない。
期待も口にしない。
煙だけが、ふたりの間をゆっくり漂っていた。
最後の一筋が天井へ消えていく頃には、この部屋で過ごした時間も、煙のように輪郭を失っていく。
けれど煙草を吸うたびに思い出すのは、煙の味ではなく、その向かい側にいた人の静かな気配なのだ。
『スーパーの裏でヤニ吸うふたり』と『ラブホの中でヤニ吸うふたり』
このタイトルが似ているのは、「煙草」ではありません。
「煙草を吸う時間が、人と人との距離を縮める」
という考え方です。
ラブホテルという空間では、
・施術前は緊張をほぐす一本
・休憩中は心を休める一本
・施術後は余韻を味わう一本
同じ煙草でも、その一本が持つ意味は、その時の関係性や空気によって変わります。
だから「ラブホの中でヤニ吸うふたり」は、恋愛や喫煙を描きたいのではなく、
「何もしない時間を誰かと共有することの心地よさ」
を描いたタイトルです。
煙草は、その静かな時間を象徴する小さな小道具に過ぎません。
タバコを吸う時間は、いつも同じじゃない。
施術前の一本は、まだ少し緊張が残る時間。
休憩中の一本は、心と身体がほどけていく時間。
そして施術後の一本は、「今日もありがとう」と余韻を味わう時間。
同じ一本の煙草でも、その意味は関係性や、その日その時の空気によって少しずつ変わっていきます。
神無月ピエロでは、その「何気ない時間」も、大切にしています。
「ここでは吸ってもいいんですよ。」
「吸いたいけれど、吸っても大丈夫かな?」
そんなふうに遠慮されるお客様もいらっしゃいます。
神無月ピエロでは、喫煙される方であれば、どうぞ気兼ねなく一服してください。
もちろん、神無月もご一緒します。
煙草そのものが目的ではなく、一緒に煙を眺めながら過ごす数分間が、思いのほか心をほぐしてくれることがあります。
その時間も、この場所ならではのおもてなしのひとつだと思っています。
もちろん、苦手な方への配慮も。
・煙草の匂いが苦手な方
・受動喫煙が気になる方
そうしたお気持ちも、とても大切にしています。
普段は、電子タバコを吸っております。
可能な限り、匂いが残らないようなフレーバータイプのタバコをセレクトしています。
また、ご予約時やご来店時に一言お伝えいただければ、喫煙は控え、換気や消臭などできる限り配慮した環境でお迎えいたします。
どうぞ遠慮なくお知らせください。
煙草を吸う人にも。
吸わない人にも。
どちらにとっても心地よい時間であること。
それが、神無月ピエロが大切にしている「距離感」です。

