おしゃれなカフェを探すなら都内へ、と言われます。埼玉でカフェ巡りと話すと、「移動時間のほうが長そう」と笑われることもある。たしかに北本から川島町、東松山、行田まで回れば、ケーキより先にガソリンが減ります。
でも、都内の店が週末に60分の列をつくる頃、埼玉の郊外では、車を停めてから空を見上げる余裕があります。窓の外に田畑や住宅地が見え、コーヒーを飲み終えても急かされない。この余白があるから、私は埼玉のカフェへ戻るのだと思っています。
甘いものは、今も得意なほうではありません。ショートケーキを2個続けて食べるより、武蔵野うどんを800グラム食べるほうが気持ちは楽です。それでも過去3年で通った回数、注文したメニュー、舌に残った甘さを思い返しながら、5軒を並べました。
順位は今日の私の気分です。味の優劣というより、「もう少しここにいたい」と感じた時間の長さで決めています。
▶ 埼玉全体の飲食店を見渡したい方は、こちらの目次からどうぞ
第5位:お菓子工房crème|ショートケーキのスポンジを先に食べた日
東松山市西本宿にある「お菓子工房crème」へは、これまで6回足を運びました。そのうち4回、ショートケーキを選んでいます。
同じものを注文するのは比較のため、と食通らしく言いたいところですが、正直に言えば、店頭で迷った末にいつもの場所へ戻っているだけです。
初めて食べたとき、一口目はクリームではなく、フォークの先にスポンジだけを取ってしまいました。口に入れると、押し返すような弾力より、舌の上で細かくほどけていく感覚があります。卵の匂いは強すぎず、飲み込んだあとに淡い甘さが残りました。
スポンジやプリンには、滑川町の木村養鶏場による栄味卵が使われています。生クリームは北海道阿寒湖周辺で生産される地域限定のもの。私がショートケーキを4回選んだ理由は、このクリームが軽いからです。
最初の2秒は乳脂肪の丸い甘さが来ますが、後味は思ったより早く引きます。甘いものが苦手な私でも、途中でコーヒーへ避難せず食べ切れました。これは私の中では、かなり大きな出来事です。
3回目の訪問ではプリンも買いました。スプーンを入れたときは少し硬めに見えたのに、口の中では角がなくなります。カラメルには焦げた苦さがあり、卵の甘さを一度切ってくれる。私はプリンを食べるとき、最後にカラメルだけ余らせる癖がありますが、この日は底まで均等にすくいました。
奇抜な名前のケーキを並べる店ではありません。ショートケーキ、ロールケーキ、チーズケーキ、ガトーショコラ。知っているお菓子を、材料から真面目に作る店です。
高坂駅西口から徒歩約8分。手作りのため、商品が完売すると予定より早く閉店することがあります。私も一度、18時20分に着いて目当てのショートケーキを逃しました。以来、夕方に向かう日は先に営業状況を確認しています。
第4位:千明だんご 川島店|26本食べても、記憶に残るのは最初の一本
埼玉カフェの記事に、だんご屋を入れる。しかも4位。少し反則かもしれません。
ただ、私にとって甘いものを食べながら休む時間は、洋菓子店のテーブルだけにあるものではありません。焼きたてのだんごを受け取り、車へ戻るまで待てずに一本食べる時間も、立派なカフェ休憩です。
千明だんご川島店には、川島町を通る途中で9回立ち寄りました。記録を見返すと、買ったしょうゆだんごは合計26本。もちろん、一度に全部を食べたわけではありません。そこは40歳として、少し弁明しておきます。
焼きたては、袋を開ける前からしょうゆの香りが上がります。表面には薄く乾いた部分があり、歯を当てると一瞬だけ抵抗する。その直後、中のやわらかさへ変わります。
「やわらかい」で終えると簡単ですが、餅のように伸び続けるのではなく、噛むたびに米の粒を細かくしたような密度を感じます。しょうゆは甘さを前に出す味ではありません。焦げた部分の苦みと塩気が先に来て、3回ほど噛んだ頃に米の甘さが追いついてきます。
最初の訪問では、店を出てから7メートルほど歩いたところで一本食べました。駐車場へ戻るまで我慢できなかったのです。食レポっぽく距離まで書きましたが、実際に測ったわけではありません。歩幅から逆算しただけです。
川島町と言って場所がすぐに浮かぶ人は、埼玉県民でも多くないかもしれません。でも、千明だんごを目的に車を停めると、この町は通過点ではなくなります。派手な観光地がなくても、焼けたしょうゆの匂いだけで目的地になれる。私はそういう埼玉が好きです。
千明だんごのある川島町と、所沢・ふじみ野周辺の店はこちらにもまとめました
第3位:ユアディアコーヒー|鴻巣駅から3分、コーヒーが苦手でも逃げなくていい
ユアディアコーヒーは、鴻巣駅東口から徒歩約3分。店内はベネチアをイメージした空間で、アンティーク家具や調度品が置かれています。
鴻巣からベネチア。文字にすると約9,500キロメートルの無理があります。でも、その距離を内装と一杯のコーヒーで縮めようとする発想が、私は好きです。
これまで5回訪れ、3回はポークカレーを注文しました。国産の武蔵麦豚を使い、カレー粉は店独自の配合です。
一口目は、唐辛子の刺激より香辛料の匂いが先に鼻へ抜けます。口の中が急に熱くなる辛さではなく、食べ進めて4口目あたりから額が少し温かくなるタイプ。豚肉の脂は舌に長く残らず、噛んだあとに肉の甘さだけがカレーへ溶けていきます。
2回目に食べたとき、カレーのあとに深煎りのコーヒーを合わせました。カレーの余韻が残った状態で飲むと、最初は苦みが強く感じられます。ただ、飲み込んだあとには、口の中に残っていた油分が一度まっすぐになる。食事とコーヒーを別々に考えていた私には、少し意外な組み合わせでした。
コーヒーは浅煎り、深煎りから選べ、濃さの調整も相談できます。私は最初の訪問で「酸味が強くないものを」とだけ伝えました。かなり曖昧な注文ですが、店側が選択肢を狭めてくれたので助かりました。
17席の店内には噴水の音が流れています。会話が6秒ほど途切れても、その音が間を埋めてくれる。一人で過ごすにも、まだ沈黙に慣れていない二人で行くにも、やさしい店だと思っています。
第2位:直火焙煎珈琲 まめや忍|最初のひと口より、7分後がおいしかった
行田市忍にある「直火焙煎珈琲 まめや忍」へは、7回訪れました。そのうち5回は、まめや忍ブレンドを選んでいます。
この店が掲げるのは「焙きたて・挽きたて・淹れたて」の3つ。豆を注文ごとに直火焙煎し、飲み方や好みに合わせて提案してくれます。
初めてブレンドを飲んだ日は、出された直後に口をつけました。香ばしさより熱さが勝ち、「専門店でも最初は熱いんだな」という、何の役にも立たない感想を持ったことを覚えています。
印象が変わったのは、カップが置かれてから約7分後です。
温度が少し下がると、最初に感じた鋭い苦みが丸くなり、その奥からナッツを煎ったような香りが出てきました。飲み込んだ直後は舌の中央に苦みが残りますが、10秒ほどすると、口の両側にかすかな甘さを感じます。
コーヒーは温度で味が変わる。当たり前の話かもしれません。ただ、その変化を時計を見ながら確かめたのは、この店が初めてでした。
4回目にはニューヨークチーズケーキを合わせました。チーズの酸味は強くなく、舌へ密着するような重さがあります。コーヒーをひと口飲むと、その重さが一度ほどけ、再びケーキへ戻りたくなる。結果として、ケーキとコーヒーを交互に11往復しました。
数える必要はありません。でも、私は専門分野の仕事を16年続けたせいか、気になると数字を残したくなります。
埼玉には海がなく、行田は都内から気軽に途中下車する場所とも言いにくい。けれど、豆を焙煎する時間まで含めて一杯を待つなら、その距離も体験の一部になります。急いで飲むためではなく、少し速度を落とすためのコーヒーです。
第1位:アンジェラプレイスカフェ|13回戻った理由は、ケーキより食後の18分
北本市二ツ家にあるアンジェラプレイスカフェには、過去3年で13回行きました。今回の5軒では最多です。
13回のうち、ランチが5回、夕方以降が8回。食事だけで帰ったのは2回でした。残りの11回は、ケーキかデザートまで注文しています。
甘いものが苦手と言いながら11回。そろそろ設定に無理がある気もします。
私がよく選ぶのは、パスタのあとにケーキとコーヒーをつける流れです。トマトクリーム系のパスタは、ソースの酸味より乳製品の丸みが先に来ます。フォークへ巻いた麺を口に入れると、最初はクリームの厚みがあり、飲み込む直前にトマトの酸味が輪郭を戻してくれる。ソースだけが舌に残り続けないので、食後に甘いものへ移りやすいのです。
ある夜に選んだモンブランは、栗の香りが口へ入れる前から強く立つタイプではありませんでした。一口目ではクリームのなめらかさを感じ、2回ほど噛んでから栗の粉っぽい香りが追いつきます。
甘さは舌の前側に残りますが、コーヒーを飲むと苦みに置き換わる。その変化が面白く、ケーキを3分の1ほど食べたところで、私は会話を止めてしまいました。相手から「急に真剣だね」と言われ、ケーキを分析していたとは答えられず、「少し考え事をしていた」とごまかしました。
この店で私が好きなのは、食後の18分です。
平均を取ったわけではありません。ただ、スマホを見ず、すぐに席を立たず、コーヒーの温度が下がるまで話していた時間が、おそらくそれくらいでした。
営業時間は11時から21時30分まで。郊外で夕食からデザートまで過ごせる店は、車移動の多い埼玉では頼れる存在です。
北本は、国道17号を走っているだけなら通過点に見えるかもしれません。でも、車を停め、食事をして、もう少し話してから帰る。その18分があれば、通過点は二人の記憶へ変わります。
アンジェラプレイスカフェのある北本と、桶川・上尾をつなぐ店選びはこちらに書きました
ランキングの外側で、沈黙を一緒に置いておく
今回並べたのは、ケーキ店、だんご屋、ベネチアを思わせるコーヒーハウス、直火焙煎の専門店、食事から夜のデザートまで過ごせる郊外カフェです。
埼玉らしく、きれいに一箇所へ集まってはいません。一日で回ろうとすれば、甘さより移動に疲れるでしょう。私も5軒連続でケーキを食べたら、途中で山田うどんへ避難すると思います。
東京の隣なのに、東京のようには巡れない。でも、店と店の間にある長い国道や田畑、助手席で交わした会話まで一日の一部になる。それが埼玉のカフェ巡りです。
カフェで向かい合っていると、話さなくても落ち着ける相手がいることに気づく瞬間があります。沈黙を急いで埋めず、コーヒーが少し冷めるまで一緒に置いておく。私がもう一つの仕事で大切にしている距離も、たぶんそれに近いのだと思っています。
海はないし、店同士の距離も近くない。それでも私は、しょうゆだんごの焦げた匂いや、7分後に丸くなるコーヒー、食後に残った18分のために埼玉を走ります。
埼玉で無理なくお会いできる選択肢を
埼玉ローカルコース|120分 10,000円
交通費・指名料込み。施術内容は通常のホテルコースと同じです。
大宮・川越・所沢・飯能・坂戸など、埼玉県内の対象エリアで何度でもご利用いただけます。
値下げではなく、お互いの移動負担が小さいぶんを、そのまま料金に反映したコースです。

「この駅は対象ですか?」というお問い合わせだけでも大丈夫です。
※お部屋代は別途必要です。期限・回数制限はありません。
☕ カフェの外側にいる、私のこと
人と会うときも、私は会話を急いで完成させようとはしません。話したい日も、うまく言葉が出ない日もあるからです。
どんな考え方で女性と向き合い、どんな距離を大切にしているのか。少し気になったら、コーヒーが冷めるまでの時間に読んでみてください。
ここまで読んでくださって、ありがとうございました。
私は埼玉出身の40歳。地元の飲食店を巡りながら、月に数日だけ「もう一つの仕事」もしています。埼玉のことを自虐的に書きながら、結局はかなり好きなのだと思います。
もし「この人は、食べもの以外をどう見ているのだろう」と感じたら、プロフィールを覗いてみてください。
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