中でイケません
女性用風俗セラピストとして2年半のキャリアを持つ佳(ケイ)
コンプレックスを持つ女風セラピスト佳が、本音で語ってくれました。
初体験から続く
- イケない身体への焦り
- 罪悪感
- 寝取り性癖というタブーな欲望
それでも誰かのからだと心に丁寧に向き合おうとする理由。
射精や中イキをゴールにしないセックスの考え方と、「中イキできない自分」を少しだけ楽にする視点を、インタビュー形式でお届けします。
今回は、同じく女風セラピストとして活動するわたくし青(アオ)がインタビュアーを務め、佳が抱える「体に関するコンプレックス」を深掘りしていく。
普段は裏方に近い立場で活動する青だからこそ引き出せる、佳の本音と内面に迫った。
第一部:誰にも言えなかったコンプレックス
「射精できない」という悩み
青: 今日は女風というフィールドだからこそ、体に関するコンプレックスを中心に聞いていきたいと思います。佳くんのコンプレックスは以前から知っていたけど、改めて自分の言葉で教えてもらえますか?
佳: 僕はめちゃくちゃイかないんです。射精しない。今まで口とか手とかでイったことは一度もなくて、セックスをして中に入れてもイかない。これが僕のコンプレックスですね。
青: 自分ではイケるけど、相手がいるとイケない?
佳: そうです。自分ではイケます。でも相手がいると、一度も。口と手では本当に一度もないですね。
18歳、初めての夜に気づいた違和感
青: それに気づいたのはいつ頃?
佳: 18歳、大学生の時です。初めてそういうことになって。大学の先輩だったと思います。
青: そういう雰囲気になって、いざという時に?元気(勃起)にはなったけど出なかった?
佳: 元気になって、入れて、「あれ、これ俺イかない」って気づくんですよね。
青: 先輩からは何か言われた?
佳: 「大丈夫?」って聞かれて、「わかんない、ちょっと緊張してるかも」って言って、その時は終わりました。まあ、初めてだし、と。
青: 勃つけど出ない、って結構びっくりされない?
佳: されます。びっくりされますね。
指摘されることへの恐れ、悲しまれることへの痛み
青: その後、他の人からも何か言われたことは?
佳: 直接指摘されることはあまりないんです。多分向こうも言いにくいから。でも僕の方で「あ、ちょっと疲れてるな」「辛そうだな」って思われてると感じ取ってしまう。そっちの方が多いですね。
青: 怒られたり、悲しまれたりは?
佳: 怒られることはないですけど、悲しまれることはめちゃくちゃあります。「私ではイかせられないのね」って。
青: それは相手からすると、「気持ちよくないんだ」という悲しみ?
佳: そうだと思います。勃ってるのにイかないから、「私じゃ気持ちよくないんだ」って思わせてしまう。その悲しみが大きいんだと思います。
青: それが原因で別れたことは?
佳: それが直接の原因で、というのはないですね。
最初の焦り、そして変化
青: 自分にそういう特徴があると実感した時、どんな感情だった?
佳: 最初は焦りがありました。「これ俺やばいか」「なんでイケないんだろう」って。
青: 大学生の頃から20代を経て、何か変化はあった?
佳: 実は、同じ人と回数を重ねていくうちに、イケるようになるんです。挿入で。「この人と、この体位で、このペースでやっていけば僕もイケる」っていうポイントが見つかってくる。
青: じゃあ今は、同じ人と長く続ければ大丈夫という安心感がある?
佳: そうですね。最初の頃は「将来、家庭を持って子供を作れないんじゃないか」とか「この先ずっと女性を悲しませていくのか」って心配でした。でも経験を重ねるうちに「そのうち大丈夫になるだろう」って思えるようになって、そこまでプレッシャーには感じなくなりました。
青: コンプレックスは完全には消えていない?
佳: もちろん消えてないです。関係が浅い人だと、最初はどうしてもそうなってしまう。だから最初に相手には伝えるようにしています。
青: 伝えた時の反応は?
佳: 「え、そうなの?」って冗談みたいに受け取られることが多いですね。本当にイかないとは思ってないんでしょうね。勃たないとか、早漏遅漏はイメージできても、「イかない」はなかなかピンとこないみたいで。ハイパー遅漏なんですよ、僕。
コンプレックスが生んだ「攻める力」
青: 逆に、そのコンプレックスが役に立ったことは?
佳: ありますね。自分がイケないことで女性を悲しませてしまうから、「せめて相手には気持ちよくなってもらおう」って思うようになった。どこが気持ちいいのか、何が気持ちいいのか、探る時間が増えました。
青: 攻める側の意識が強まっていった。
佳: そうです。コンプレックスがあるからこそ、「楽しんでもらわなきゃ」「気持ちよくなってもらわないと」っていうマインドに変わっていきました。
隠すか、見せるか
青: 中でイケないことは、割と誰にでも言える?
佳: そういう話の流れになったら全然話します。プライベートでも、女風の接客でも、聞かれたら普通に答えますね。ただ、いきなり「俺イケないんだよね」って言い出すシチュエーションはあまりないので、自分からわざわざ言う感じではないです。
青: 他の人の体験談を聞いて、自分のコンプレックスが刺激されることは?
佳: あまりないですね。早漏で悩む人もいれば、勃たない人にはそれなりの悩みがある。みんなそれぞれだよなって感じなので、特に悲しくなったりはしないです。そういうもんだなって受け入れられてきた感じがあります。
もし治ったら何が変わる?
青: もしイケるようになったら、今の性生活は変わる?
佳: ちょっと前向きにはなると思います。最初の何回かでイケなくて相手を不安にさせてしまうのは、自分の中でもう確定事項みたいになってるので。そこがなくなるだけでも気持ちは軽くなるかな。
青: 一般的には言いづらいジャンルの悩みだからね。
佳: そうですね。
第二部:欲望と内面を探る
青: ここからは、もう少し佳くんの内面、欲望とか、体のこととかについて聞いていきます。
承認欲求と「期待値」のコントロール
青: セラピストとして、男性として、「魅力的だと思われたい」「モテたい」という気持ちは強い方?
佳: ゼロじゃないし、そういう気持ちはあります。でも、よく見られすぎるのも怖いんですよ。期待値が上がりすぎると、実際に会った時に「言ってたことと違うじゃん」ってなるのが怖い。だから、よく見られたい気持ちはあるけど、上げすぎないようにしています。
青: 口コミもたくさんあって、いいことも書いてある。初めてのお客さんは期待して来るんじゃない?
佳: どうなんでしょうね。「期待されてる」というより「しっかりしなきゃな」っていう感覚の方が強いです。普段の発信も、趣味のこととか、フィギュアとかガチャガチャとか、猫のこととか。そういうのがメインなので。「ものすごい技術があるこの人なら大丈夫」って来る人たちではないと思うんです。
青: なるほど。
佳: そこそこの期待で来てくれて、実際に会ったら「思ったより良かった」って感じてもらえる方が、リピーターになってくれやすいし、体験として「想像以上だった」ってなると思うんで。だから期待値は上げすぎないようにしています。
頭にこびりつく、あの夜の涙
青: これまでの性体験で、印象に残っていることは?
佳: いくつかありますけど、さっきのコンプレックスと絡めて言うと、やっぱり泣かれることですね。女性側に「私でイかせられなくてごめんね」って泣かれる。それは頭にこびりつきます。
青: 自分がイケないことで、相手が泣いてる。
佳: そうです。それはなかなか消えないですね。ずっと残ります。
罪悪感と興奮——「寝取り」への告白
青: 悪いことをしたような罪悪感、タブー的なものを感じたことは?
佳: ……日記にちょろっと書いてあるんですけど、僕、寝取りが好きなんです。
参考:https://roca2024.com/dekirukoto/
青: 彼氏がいる女性、旦那さんがいる女性に興奮する?
佳: そうです。罪悪感が大きければ大きいほど、旦那さんにも、彼氏にも、その女性にも申し訳ないって気持ちがありつつ、それが大きいほど僕も興奮してしまう。そういう罪悪感ですね。
青: 女風の仕事でも、既婚者の方はいるよね。そこで感じることは?
佳: 思ったより、旦那さんや彼氏のことを話される方は少ないですね。意外とそういう話にはならないです。
本当は「攻められたい」けど
青: 自分がイケないから攻める側に回る。でも本当は「こうされたい」っていう欲望はある?
佳: 実は、自分がイケないことで全身敏感になってるんですよ。だから攻められるのも好きだし、どこでも気持ちいい。でも普段は言わないですね。言えない。
青: どうして?
佳: 結局また最後に悲しませてしまったら、って思うと……だったらまず女性側に気持ちよくなってもらう方を優先しなきゃな、って。
青: やっぱりコンプレックスに引っ張られてる感じがする。
佳: そうだと思います。
劣等感と、それを超える楽しみ
青: 他の人は普通に楽しんでるのに、なんで自分だけ。という劣等感はある?
佳: イケないってことに対しては感じます。ただ、イケないことで女性に喜んでもらうことを増やしたり、自分自身も他の部分で気持ちよくなることが増えたり、それはそれですごく楽しいんですよ。
女性が声を上げたり、体を震わせてるのを見るのも興奮するし、楽しい。イケないことには劣等感があるけど、そのおかげで他の人より楽しめてる部分もあるから、トントンかなって思ってます。
「勝った」と思える瞬間
青: 勝ち負けを意識することはある?
佳: 比較はします。お相手の元彼とか、他のセラピストさんとか。直接聞くのは怖いからしないですけど。でも、一回きりのつもりで来てくれた方がまた来てくれた時は、「あ、俺よかったのかな」「勝ったな」って思います。それは結構自信になりますね。
青: わかる。選んでくれたっていうのは嬉しいよね。
佳: 嬉しいです。
「誰かの特別」になることへの恐れ
青: 女風という仕事は、基本的に「その人だけの特別」にはなれない。「私は佳くんの特別な人にはなれないの」って悩むお客さんもいると思う。そういう時、どう向き合う?
佳: これは女風関係なく。僕、誰かの一番とか、誰かの特別っていう関係が怖いんです。苦手というか。
青: それはなぜ?
佳: プレッシャーなんですよね。一人の人とずっと一緒、って思うと、自分の時間がなくなるとか、その人のことを一生考えていかなければならないって感じてしまう。重荷に感じてしまうんです。
青: それが寝取りが好きなことにも繋がる?
佳: そうだと思います。自分が一番じゃないから、楽しくなっちゃう。だから、誰かの特別になれないって思った時は、「それでいいじゃん」って思えるんです。
青: そこで折り合いがついてるんだね。繋がった感じがする。
体と心の繋がり——ワンナイトができない理由
青: 体の関係があっても、気持ちが繋がらないと感じることはある?
佳: 僕の場合、心の繋がりが一切ゼロで体の関係を持つことは、多分できないです。どこかしらで共感するところとか、惹かれるところがないと、体の関係はうまくいかないと思ってます。だから、体の関係があるなら、心も繋がってないってことはあまりない。
青: 寝取りの場合は?相手の女性には感情移入しなくても興奮する?
佳: 寝取りの場合、スタートはその女性の悩みとか、今の関係の不満とかを聞くことから始まるんです。そこで薄くても繋がりができる。
青: クラブでナンパしてすぐワンナイト、みたいなのは?
佳: それは僕、できないんです。ナンパもできないし、すぐ関係を作ってすぐ体に、っていうのは無理ですね。薄くてもいいから、その人となりが見えてからじゃないと。
まとめ:「イク」がゴールじゃない
中イキできない女性へのメッセージ
青: 最後に、イケない、特に中イキできないと悩んでいる女性にメッセージがあれば。
佳: 「イク」ってゴールじゃないと思うんですよ。僕は射精がなくてもめちゃくちゃ満足するし、イケなくても気持ちいい。男だと「イッたら終わり」って分かりやすいですけど、女性の「イク」って、共通認識として持てているものでもないし、人によって感覚もバラバラだと思うんです。
青: 確かに。
佳: そこを考えすぎると、感じにくくなったり、気持ちよさが減ってしまったりする。だから、「結果的にイキました」くらいでいいと思います。イケるかどうかで悩むより、たくさんの気持ちよさを見つけられた方が、気持ち的にも楽だし、楽しいと思います。

番外編:プライベートでの「終わり方」
青: 完全に個人的な興味なんだけど。プライベートで挿入した時、どこで終わるの?
佳: それ、よく聞かれます(笑)。
青: 「出ました、終わり」じゃないでしょ?時間なのか、体力なのか。
佳: 一番分かりやすいのは、相手の体力の限界が見えた時ですね。「あ、疲れてるな」って感じたら、「ごめんね、ゆっくりしよう」って言って終わり。99%はそれです。相手が苦しそうになるのを感じやすくなってるので、その辺は敏感になってます。
青: 残りの1%は?
佳: 逆に僕の体力が尽きて、寝落ちみたいになっちゃう時ですね。
青: 「出た」演技はする?
佳: しないです。バレるでしょ?
青: どうだろう?一回きりの相手ならバレないかも。でも彼女とかだったら多分バレる。
佳: そうですよね。演技はしたことないです。
青: なるほど、ありがとうございました。
佳: ありがとうございました。
編集後記

「イカない男」が教えてくれたこと
インタビューを終えて、佳の言葉には、飾りがなかった。
「射精できない」という、男性にとって最もデリケートな部分を、彼は淡々と、しかし確かな温度を持って語った。
この業界で2年、プレイヤー兼裏方として多くのセラピストを見てきた。
- 華やかな自己PRで集客する者
- テクニックを武器に語る者
- 「癒し・寄り添い」を看板に掲げる者
それぞれのやり方がある。だが佳は、そのどれとも違う場所に立っている。
彼は「期待値を上げすぎない」と言った。
SNSではフィギュアや猫の話ばかり。セラピストとしての技術や魅力をアピールしない。
一見、戦略がないように見える。だが私には、それが極めて計算された、いや、「計算」という言葉は似合わない。
「誠実な設計」とでも言うべきか、ポジショニングに見えた。
コンプレックスを「武器」にしない強さ
世の中には「弱みを強みに変えろ」という言説が溢れている。
だが佳は、コンプレックスを「武器」にはしていない。克服も完全にはしていない。
ただ、そこにあるものとして受け入れ、その結果として生まれた感覚、全身の敏感さ、相手を観察する眼、「気持ちよくなってもらわなきゃ」というマインドを静かに育ててきた。
「トントンかな」と彼は言った。
この言葉に、私は彼の成熟を見た。劣等感をゼロにするのではなく、得たものと並べて「トントン」と言える。
それは、自分との長い対話の末にたどり着いた境地だろう。
「特別」を求めない男の、特別さ
印象的だったのは、「誰かの一番になるのが怖い」という告白だ。
女風という業界では、セラピストとお客様の間に生まれる感情の揺らぎが、しばしば問題になる。
- 「俺だけを見て」
- 「君は特別」
そうした欲望のせめぎ合いの中で、多くの人が傷つく。

だが佳は、最初から「特別」の椅子に座ろうとしない。
「それでいいじゃん」と言える。
この姿勢は、一見すると冷たく映るかもしれない。だが私には、それが彼なりの優しさに見えた。
「特別」という重荷を相手にも、自分にも背負わせない。その分、目の前の時間に集中できる。
相手がいる女性に惹かれる、という性癖の告白も、この文脈で理解できる。
「一番じゃないから楽しめる」
それは逃げではなく、自分の心の構造を正確に把握した上での、生き方の選択だ。
沈黙の中にある言葉
2年半という経歴は、この業界では長い。
佳の言葉には重みがあった。
- 泣かれた経験
- 「ごめんね」と言われて終わる夜
- 相手の体力の限界を感じ取る敏感さ
インタビューの最後、彼はこう言った。
「気持ちよかったらそれでイったことにしていい」
この言葉を、私は女性だけでなく、すべての人に届けたいと思った。
- ゴールに囚われるな。
- 正解を求めるな。
- 気持ちいいポイントをたくさん見つけろ。
それは、セックスの話であり、人生の話でもある。
「普通」の男が「普通」を問い直す
佳は、特別な才能を持ったセラピストではないかもしれない。
猫が好きで、ガチャガチャが好きで、人の話を聞くのが好きな、32歳の男。
だが、その「普通」さこそが、彼の最大の武器なのだと私は思う。
「普通」の男が、自分のコンプレックスと向き合い、相手の痛みを想像し、「それでいいじゃん」と言えるようになるまでの道のり。
それは、誰もが歩ける道であり、誰もが歩くべき道かもしれない。
佳に会いたいと思った人は、きっと正しい。
彼はあなたの話を聞いてくれる。そして「イカなくても大丈夫」とその存在で示してくれるだろう。
取材・構成:青(2025年12月6日収録)
青(アオ) セラピスト歴2年。プレイヤー兼裏方として活動しながら、この業界の「言葉にならないもの」を言葉にする試みを続けている。



